RSIは業務システムにも起こせる? 自己進化型システムの作り方と人間の役割

「AIが自分を改良し、次はもっと上手に自分を改良する」。そんなRSI(Recursive Self-Improvement/再帰的自己改善)の話を聞くと、遠い未来の研究に思えるかもしれません。
この記事では、RSIの考え方を応用した自己進化型業務システムの作り方、評価の落とし穴、人間の役割を、予約業務の例で解説します。
改善する対象をAIモデルの重みから業務システムや仕事の進め方に移したらどうでしょう。問い合わせ、予約、見積もり、記事運用。結果を測り、改善案を出し、試して、次の改善に生かす仕組みなら、今の技術でも段階的に作れます。
監督:「シンギュラリティは好きな言葉だ。でも現場の入力作業が一つ減るほうが、まずは切実だよな。俺たちの業務システムも、改善の仕方まで変えられるんじゃないか?」
時任ミライ:「2038年から来た私には、今の選択が未来のビジネス史の一行目に見えます。でも『自己進化』という名前だけでは前に進みません。何を測り、誰が採用を決めるか。そこから設計しましょう」
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無料で見積もりRSIとは? 業務システムの「自己進化」とは違うのか
本来のRSIは、AIが自分自身、あるいは後継のAIを改良し、その結果として次の改良を行う能力まで高めていく考え方です。単に同じ作業を繰り返すこととは区別されます。
この記事でいう「自己進化型業務システム」は、ドリーミが考える業務への応用を表す呼び名です。AIモデルが自分の重みを学習し直すという意味ではありません。業務データを使って改善案を作り、評価を通過した変更をシステムや運用に反映する仕組みを指します。
さらに、次の改善の精度を上げるために、分析方法、実験の選び方、評価基準の見直しまで扱う。そこが、ただの定期レポートや自動化から一歩進むところです。ただし、何でも自律的に改変できるという意味ではありません。
例:予約システムが改善を提案するまで
たとえば、予約フォームの途中離脱が増えたとします。システムは、入力項目ごとの離脱率、予約完了率、問い合わせ内容、対応にかかった時間を集めます。そして「必須項目が多いのでは」「空き枠の見せ方が分かりにくいのでは」と仮説を出します。
改善案として、フォームの項目順を変えた案を用意し、テスト環境で動作確認する。対象を限定した比較で、予約完了率だけでなく、無効な予約、キャンセル、スタッフの確認工数も測る。結果がよければ担当者が確認して採用し、悪ければ戻します。

監督「予約が増えても、現場の電話が増えたら逆効果だな。」
時任ミライ「判断する数字を一つに絞らないことが大切です。」
時任ミライ:「2038年から今の予約業務を見ると、ここが分岐点になりそうです。予約数だけを追えば、重複予約や電話確認が増える可能性があります。私なら現場の確認時間も一緒に測ります」
監督:「俺なら『予約が増えた、成功!』で喜んでしまいそうだ。現場の電話が増えていたら、仕事を楽にするどころか逆効果だな」
次の周回では、AIに「なぜ前回の仮説が外れたか」まで分析させます。たとえば曜日別の差を見落としていたなら、次回の分析手順に曜日別集計を加える。改善の方法そのものを改善する発想です。
「自己進化」を始めるための7つの段階
- 目的を決める: 予約完了率、対応時間、顧客満足など、何を良くしたいかを明確にする。
- 現状を記録する: 変更前の数値、ログ、例外ケースを残す。比較の土台がなければ効果は判断できない。
- AIが仮説と変更案を作る: 根拠に使ったデータ、期待する効果、想定する副作用を一緒に示す。
- テストする: テスト環境や対象を限定した実験で、機能、品質、費用、安全性を確かめる。
- 人間が承認する: 顧客への影響、契約、価格、個人情報、ブランド表現などは責任者が判断する。
- 反映して再評価する: 変更履歴と戻す手段を用意し、導入後の結果まで追う。
- 改善手順を見直す: 仮説の作り方や評価項目を更新し、次の周回に生かす。ただし評価基準の変更自体も人間が検証する。
実装の最小構成なら、既存システムのイベントログと集計画面、改善案を記録する台帳、テスト環境、承認フローから始められます。改善案には変更前後の設定、想定した指標、実測値、担当者の判断をひも付けます。次回のAI分析には成功例だけでなく失敗例も渡し、同じ仮説を無条件に繰り返さないようにします。こうした記録が、自己進化型業務システムの学習材料になります。
最初から全部を自動化する必要はありません。「AIが提案し、人が選ぶ」だけでも、改善の回数と学習の蓄積を増やせます。
KPIだけを追うと、間違った方向へ進む
「問い合わせ件数を最大化」と指示すれば、商談にならない問い合わせまで増えるかもしれません。「予約完了率を上げる」だけなら、確認が必要な条件を省いてしまうかもしれません。指標の改善と事業の改善は同じではないのです。
評価には、主指標に加えて副作用を見る指標を置きます。予約ならキャンセル率や二重予約、見積もりなら粗利と成約後の手戻り、記事なら流入だけでなく問い合わせの質や情報の正確さも見る。数字に表れない顧客の声や現場の負担も確認します。
AI自身に評価基準を変えさせる場合は、いっそう慎重さが必要です。都合のいい物差しへ変えて「成功」に見せる余地があるからです。評価の変更履歴と元の基準を残し、独立した確認を通してから採用します。
人間のチェックは、どこに残すべきか
誤字の検出や既知のテストケースの実行など、結果を明確に判定できる作業は自動化しやすい領域です。一方、価格改定、公開内容、顧客データの利用、業務ルールの変更は、人間が目的と影響を確認する必要があります。
監督:「やれることはAIに任せて、人は創るほうへ。だからこそ俺たちは、何を良くしたいかと、どこまで任せるかを決めるんだな」
時任ミライ:「はい。私が未来のビジネス史を読むときも、注目するのは導入したAIの数だけではありません。顧客と現場への影響を誰が引き受けたかです。ただし2038年の結果をここで予言するつもりはありません。今、検証して選ぶことが未来を分けます」
まずは観測 → AI分析 → 改善案 → テスト → 人間承認 → 反映 → 再評価。実績が積み上がった範囲だけ、自動反映の対象を少しずつ広げるのが現実的です。停止条件と元に戻す手順も、導入前に決めておきます。
シンギュラリティを待つより、小さな改善ループを回す
「シンギュラリティ」はAIの能力や社会への影響をめぐる大きな議論です。業務システムの改善ループが回ったからといって、シンギュラリティが到来したわけではありません。
それでも、結果を観測し、改善を試し、改善方法まで磨いていく設計には実用的な価値があります。ドリーミが目指すのは、現場の判断を置き去りにした完全自律ではなく、使うほど改善の根拠が蓄積される業務システムです。
まず一つの業務で、現在の数値と困りごとを記録するところから始めてみませんか。「何を自動化し、どこを人が確認するか」まで含めて設計すれば、自己進化という強い言葉を、実際に運用できる仕組みへ近づけられます。
自社の業務に当てはめるなら
予約・見積もり・問い合わせのどこから改善ループを作るべきか迷う場合は、現在の業務フローと測れる数字を整理するところから始めましょう。自己進化型業務システムの開発範囲や費用感を知りたい方は、ドリーミの無料概算見積もりをご利用ください。要件が固まっていない段階でも、相談内容から必要な機能を整理できます。
参考資料
- Recursive Self-Improvement in AI: From Bounded Self-Refinement to Autonomous Research Loops — RSI研究の対象と閉ループの程度を整理したレビュー。
- Anthropic: Demystifying evals for AI agents — エージェントの動作記録と評価設計について。
- OpenAI: How evals drive the next chapter in AI for businesses — 業務での評価設計と人による確認について。



